Treasure


 あゆか  様 より 


※こちらの作品の著作権は、 あゆか  様 が有していらっしゃいます。
無断DL・無断転載・二次加工・再配布といった行為は厳禁です!
No reproduction or republication without written permission.

【濃染月〜夜明け〜】


  《あゆか様のコメント》

大変遅くなりましたが、2枚目の濃染月を持ってきましたよ。

  濃染月の情景ですが、前に描いた絵の場面で、
  アングルを変えて、といったところですが・・・


                     〜オエビコメント&メールより転載〜


  《管理人Ikuのコメント》

うう、まずは一言。
魅せられました!

もう、一言。
苦悩する犬君が、・・・ううっ、>< お、美味しい! (←ばきっ!)


では、ちゃんと、こちらの作品の感想をば!
何も音が聞こえてこないほど静かな静かな空間に、
犬君の、少し早目の息遣いだけが聞こえてきそうです。
場面設定を存じ上げていなくとも、
”毒なり怪我なりで犬君は傷つき、
 かごちゃんの膝の上に頭を寄せて、眠りに落ちる事も出来ず、
 ただただ朝を待っている。
 実際には、体調が・・・かなり危ない・・・。”
状況の様に見えます。
かごめちゃんにできることは、ただひたすらに膝を貸す事。
苦痛に耐える犬君に、手を添えて、今は心で【願う】しかできない。
犬君に声をかければ、無理にでも答えてくれそうで、
それすらも出来なくて、
身動き一つせずに、ただただ心の中で、時が過ぎるのを祈っている。

そんな遅々として進まない永遠の静寂が、
今、終らんとする狭間の時間(夜明け間近)が訪れる。
木々の遥か彼方に垣間見える白みはじめた空に、
もう大丈夫、後少しと、心で念じているようです。^^

かごちゃんが、上半身の態勢を少しよじった感じなのが、
犬君を思う心の表れのひとつなのかしら?
犬君のお顔から、決して外さぬ視線。
身動き一つしない、引き絞った口許。
あゆかさんの描き出されるそんな微妙で微細な表現に、
かごめちゃんの、犬君を想う心が表現されていると思います。

犬君も、かごゃんの膝。
――ここだけが、安住の場所と言いたげな表情。
ただ膝の上と言うだけでなく、深く深く心まで預けた場所で、
まるで胎児がおなかの中で、丸まっているような態勢をしてるような気がします。

そして、衣の質感がいいですね。
柔らかく上質のタフタのような手触りがしそうです。
左肩の裂けた衣が妙にリアルですわ。
闇に沈む世界にかすかに差し込む光。
私は、あゆかさんの描かれる頬や唇に置かれた
メリハリの或る「白」による表現が好きです。
流れ落ちる黒髪が膝の上を添っていくラインも良いなあ。
身動きしたら、さらっと音を立てそうです。

背景の木々の重厚な筆致が凄いです。
闇の中、慣れた目だけに映る木々や草。
犬君の右側にある蔦も、背後に生えるシダのような草も、
地に生える下草も、それぞれが別の表情を持ってますわね。

白んでくる空に照らされて、木々に色が戻ってくる。
かすかな光に照らし出され、
「さあこれからだ!」と、
静から動へと移り変わる手前の『時』を切り取ったようで、
見惚れてしまいました。^^

そのくせ、一番に目に留ったのが、衣の破れ目だと言ったら、
「ぷんぷん」って、あゆかさんに言われちゃいそうです。(゚-゚)

「濃染月」を題材に、素晴らしい世界を表現して下さって、
小説を書いたのが自分ではなくとも、とても嬉しいです。
うちで展示させて頂いている作品に感銘を受けて頂けるって、
それだけで嬉しいんですよ。

本当に、こんな素敵な作品を拝見できる事になったのも、
ヨモギさんに素敵なキリリクを書いて頂いたおかげですわ。^m^

あゆかさん、素晴らしい作品をありがとうございました。

ところで、またもや、お約束の蛇足SSをばv
またしても、犬君は「濃染月」バージョン以外でも、
相変わらず怪我をしております。

宜しければ、(怪我に)懲りない手負い犬君をお楽しみくださいませ。^^

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  『朝まだき』


――それは月のない夜の話。



朔の夜の宿命といえる”常”に比してか弱き身体であっても、
少年の意識は相変らずであった。


  『少女をこの世の全てから守り通す』

心に定めたその【誓い】に拠(よ)りて、
闇に溶け込む ぬばたまの黒髪を翻し、
少年は無意識の内に、少女に襲い掛かろうとする妖(あやかし)の 鋭い爪の前に
その身を躍らせた。

「かごめぇっ!」
「くうぅ・・・っ・・・。」
「犬夜叉!」


少女を呼ぶ声と、苦悶のうめき声と、少年を呼ぶ声と、
そして、辺りにほとばしる鮮血とが、ほぼ時を同じくして空(くう)に放たれた。

少年は、そのまま守るように少女を己(おの)が腕に抱いたまま、
少女の背後に穿たれた深い漆黒の闇の中へと落ちていった。





どれほどの高さを転がり落ちたのだろう。
そこは、崖下の薮に隠された、広くもないぽっかりと空(あ)いた空間。
下草が深々と繁り、二人に襲い掛かる衝撃を限りなく減じてくれた。


  ――運がいい。



二人揃って、首の骨も折れず、身体中に刻まれた切り傷と
少女を庇いながら崖を転がり落ちた少年の左腕の骨折のみで済んだ。
襲い来るはずの妖は、仲間達の相手となって、
彼ら二人はその矛先から外された。


  ――運がいい。







どれほどの時が経ったのだろう。
少女が身体を走る痛みに目覚めると、
自分を掌中の珠の如くに抱き込んだ少年が目に映る。
そして、自分のために傷ついた少年によって、
またしても守られた事に思い至る。
少女の心臓はきりきりと締め上げられる。
少年の肩口の爪痕からは、今もじわじわと血が滲み出し、
爪によって切り裂かれた衣の布端は、
少年が流した血によってどす黒く縁取られ、今も濡れたままである。
苦悶に歪む顔は少し青ざめて、細く切れ切れに吐き出される吐息が、
少年の傷の深さを伝えてくる。
それでも、伝わる肌のぬくもりと、規則正しい心臓の鼓動が、
少年の”生”を確信させてくれる。


少女は空をふり仰ぐ。
茂みの上に覗く空は首の長い壺の中から外を眺めたようで、
見渡す視界は狭く、天空の星の位置より”時”を推し量る事は叶わない。
星の瞬きから、今はまだ、闇が世界を支配している事だけが分かる。


  涙がとめどなく溢れる。



いつもいつも少年は、少女のためにその身体に傷を受ける。
少女がいくら止めてくれと懇願しても、それが聞き入られる事はない。
代わりに、少年は寂しげな表情を浮かべるか、怒りをあらわにするだけである。


 『少女をこの世の全てから守り通す』

それは、少年が心に定めたただひとつの【誓い】
未来を夢見る事を己に禁じた少年にとって、それはただひとつの願い。
何より大切で、誰よりも愛しい少女に捧げることができる、ただひとつの証。


少女にできることは、祈る事。

少年の身体が傷つかないように、
少年が受けた怪我が早く治るように、
少年が笑っていてくれるように、
少年の心が涙を流さないように、と。



少女は、瞳を伏せた少年の額に手を当てる。
少女は、意識の戻らぬ少年の頬を両の手の指で辿る。
胸に少年の頭をすっぽりと抱え込んで、朝の光を懇願する。


  涙がとめどなく溢れる。


少女の漆黒の瞳から零れ落ちる真珠の一滴(ひとしずく)が、
少年の頬を流れ落ちる。

「かごめぇ・・・、大・丈夫か?
 おまえ、怪我してねえか?」

真珠の一滴が、少年の意識を現実の世界へと呼び戻す。
最初の言葉は、己の命よりも大切な少女の無事を問うもの。

「うん。///
 妖怪は私達から離れていっちゃったみたいなの。
 多分、弥勒様と珊瑚ちゃん達が、引き受けてくれたみたい。
 此処は、あそこの場所から、ずいぶんと下におちたところみたいなの。
 犬夜叉、朝が来るまで、大丈夫だよね・・・。」

「ああっ。爪の毒も・・・大した・・事・・・・・・ねえっ。
 朝さえ来れば・・・でえ・・じょう・ぶ・・・だ・・・。
 今は、・・・少しだけ・・・、休ませて・・くれ・・。
 おまえの膝、貸して・・・くれる・か?」
「うんっ.///」


  喜びの涙が溢れる。




朝が来るのはいつだろう。
少年が全き姿を取り戻すのはいつだろう。

遥か東の空に光が宿るまで、
木々の草葉に隠れて暫しの休息にまどろむ。






朝が来るのはいつだろう。
少年が全き姿を取り戻すのはいつだろう。

遥か東の空に光が宿る。
木々の草葉に隠されて、

今はまだ光届かぬ闇の中で、暫しの休息にまどろむ。



− 了 ー     



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        (初書き2005.02.07/改訂2005.02.22) 


「朝まだき=夜明け前」という事ですね・・・

・・・・・・イラストのタイトル『夜明け』と異なり、
夜が明ける前の話となってしまいました。(ーー;)
なかなか、思うように話が転がりませんな。

お許しください。m(__)m


追伸:
>こちらのお絵かきなんですが、
>「濃染月」作者のヨモギさん宅にまずお持ちして、
>ヨモギさんにもご了解いただけたら、
>企画「八つの欠片たち」にもすこし手を加えて
>「光」で出そうかなと思っております。  by あゆか様

『光』・・・光差し込む夜明けのシーンで、苦悶してない犬君かな?
どういった風に変わるのか楽しみです。


※「光」バージョンが、2005年2月19日に、企画『八つの欠片たち』に
 アップロードされました。
 期間限定企画ですが、開催中は、このページ下のバナーより、
 リンクしております。







初  掲  載   :2005年02月03日 当サイトオエビにて

当サイト初掲載:2005年02月22日






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