〜〜イラスト『蛍だけが知っている』
 〜イメージSS『星だけが知っている』〜  





  『 星だけが知っている 』




【 星だけが知っている 】

星降る夜に誘われた。
いつもは、まんじりともせずに過ごす朔。
そんな夜に誘われた。



今夜は、楓ばあちゃんの村に居る安心感から、貴方の表情もいくらか和らいでいる。
いつもの不安を内包する瞳と違って、今夜の貴方には安らぎがある。

結界に守られし村。
安息に眠りを迎えるこの幸せ。
こちらの世界の厳しさを身をもって知る今、

             ・・・今宵の安らぎは夢のよう。



「おい、ちょっと、出ねえか?」

美しい星にいだかれて、戦国の夜を満喫する。
空いっぱいに広がる天の川。
あまりに星が多すぎて、星座一つ探せない。

それでも輝く「織女(しょくじょ)星」
もうひとつ煌く「牽牛(けんぎゅう)星」
ふたりを繋ぐ「カササギの星」

そんな私を見つめる貴方。
優しい瞳に吸い寄せられる。

「ねえ?・・・私って、織姫(おりひめ)様かしらね。
 時という名の川に、あんたと隔てられてるのかしら」

「俺は、彦星なんかじゃねえぞ。
 いつだって、おまえと一緒じゃねえか。
 それとも、そばに居られるのが一年に一度でもいいってのか?
 雨が降ったら、逢えねえままでもいいってのか?」

「・・・・・・・」

「俺は、そんなのはごめんだな。
 どこでだって、いつだっていい。
 おまえのそばに一緒にいたい。
 朝も、昼も、・・・こんな月のない夜も」





あんたの手が、私の手をからめとる。
あんたの手が、私を抱き寄せる。
あんたの顔が、私の顔に近づいてくる。

もう、あんたの顔が近すぎて見えない。
瞳を閉じて、あんたを感じる。

甘い吐息が漏れる。
柔らかな熱が、唇が落ちてくる。

あなたにすっぽり収まって、時間も止まって動かない。







時が、

一体どれだけ過ぎたのか――。

    私とあなたには分からない。




知っているのは空の星。
知っているのは草むらの星。

    ・・・見つめていたのは貴方達。


―― 了 ――

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(初書き2004.0730/改訂2006.07.07)
あれ?
蛍は何処?
あれ?あれ〜〜〜〜〜???
犬君にこんな告白されてみたいよう。><


イラスト「蛍だけが知っている」より



お気に召して頂けましたらv




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