〜〜イラスト『星影に隠れて』
 〜イメージSS『特別な夜に』〜  





  『 特別な夜に 』



その夜、
時空を越えることを許されし少女は星降る世界を後にする。

時渡りの井戸から飛び込んだ先の世界では、
頭上に広がる真っ暗な空より、ただ深々と、雪が降ってくる。

音もなく、風もなく、
天空にあるはずの月も、闇の彼方に隠されている。

世界は、幽玄に支配され、
ただただ白と黒に照り映えていた。




「おまえ、一人じゃ危ねえじゃないか。
 今夜は”むこう”で過ごすと言ってただろ?」

闇に沈む世界にあって、
黄金(きん)と白銀(しろがね)と緋色とに象(かたど)られた、
ひとりの少年が声を掛ける。

闇に浮かぶ少年は、約束のない少女の来訪を、
己を求め呼ぶ ”その匂い” に誘(いざな)われて出迎える。

「うんっ。そうね。
 そのつもりだったわ。
 でもね、こんな特別な夜は、
 あんたと一緒に居たいなって思ったの。
 そうしたら、我慢ならなくなって ・・・、
 気付いたら、井戸に飛び込んじゃってたの。

 犬夜叉、あんたの顔が見たかったの。
 あんたが来てくれて、 ・・・ 私、 ・・・ とっても ・・・ とっても嬉しい」

少年が見い出した少女は、
かすかに朱に色づいた蕾が、急に目の前でほころび始めるかのように、
柔らかな笑みを浮かべる。









    雪に閉ざされし世界に花開く。
    闇に隠れし時間(とき)に花香る。









「特別って?」

夢心地で少年は問い掛ける。
花の顔(かんばせ)に見惚れて、問い掛ける。

「今夜は、特別な夜なのよ。
 ”大切なひとに、心を届けなさい。
  そうすれば、想いが届く。”
 っていう、 ・・・ 聖なる夜 なんだって」









    沈黙が支配する。
    空よりは、止め処もなく雪が降る。

    しんしんしん ・・・。









どれほどの時が経ったのだろう。 ――――――









「特別な夜にって ・・・、
 大切なひとに、
 心を、想いを、届けるって ・・・、
 
 かごめ。
 それは、俺にか?」



    沈黙が支配する。
    闇に溶けし世界にただふたり。

    しんしんしん ――――――









「特別な夜に、
 あなたに逢いたかった。
 あなたに、心を、想いを、届けたくって。

 犬夜叉、
 今夜、あなたに逢いたかった。
 あなたに、私の心は届いたのかな」






「・・・ 届いたよ。
 かごめ。
 おまえに、俺の想いも届くだろうか?」







どれほどの時を過すのだろう。 ――――――









二人の絆を確かめたあの場所で、
月影に隠れて、誓いを交わす。

しんしんと雪に閉ざされたあの場所で、
星影に隠れて、誓いを交わす。

繋がれし吐息は、特別な夜のふたりの誓文。





音もなく、風もなく、
天空にあるはずの月も、星も、闇の彼方に隠される。

世界は、幽玄に支配され、
ただただ、白と黒とに照り映える。




それは、雪降る聖夜の誓いの物語。




ー Fin −



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(初書き2004.12.22/改訂2005.12.07)
どろ甘? う〜〜む。(゚-゚)
犬君が告白しているぞ。
さあ、明日からも誠意を見せるんだ!
何にせよ、この頃の私、甘い甘い犬かごを眺めて壊れておりました。

↑それにしても、一年前(2004年)はこんなに甘くてチュ―する二人を書いてたんだな・・・。(しもじみ)
クリスマスイラスト「星影に隠れて」より





【Iku-Text】

* Thanks dog friends ! *

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