〜 イラスト『若様始め』 〜イメージSS『目の前の獲物』〜  



『 目の前の獲物 』

「い ・ ぬ ・ や ・・・ しゃ ・ ぁ ・・・ ぁあん♥ 
「・・・・・・ へっ?」

俺にも分かる。
いつもより強いおまえの匂い。

「お、おい、かごめ! おまえ、ど、ど、どうし ・・・ た ・ ん ・・・・・・」

己が今直面しているその状況への疑問を最後まで言い終わる前に、
俺はおまえの匂いと、俺を見据えるその視線で動けなくなった。

しゅるっ。
 しゅるり――。

かごめの細く白い指先が、俺の鎧を次々と解きほどいていく。

しゅるっ。
 ふぁさっ――。

「お、おい、かごめ!」
俺は思わず、その名を呼んだ。

しゅるっ。
 とさっ、ぱさっ――。

「か、かごめ! も、もう止めてくれ!」
俺はおまえに向かって、ありったけの願いを込めて叫んだ。

「うふっ、い ・ ぬ ・ や ・・・ しゃ♥ 
かごめは手を止めると、俺に向ってにっこりと微笑みかけた。
それは、おまえに射竦(いすく)められてしまったというべきなのか、
いや、まるで魅惑という名の金縛りにあったような衝撃であった。

俺は、知らねえ。

俺は、こんなかごめは―――知らねえ。

逃げられねえ・・・・・・。

先ほどまで、俺の相変わらずな物言いにへそを曲げ、
口を尖らせ、俺に背を向けていたかごめ。

ふと、鼻をついた甘い匂い。
それは、朔の夜でも分かるかごめの国の黒い菓子のもの。

『怒ってると、甘いものが食べたくなるのよ!』
おまえは、そんな台詞を俺に投げかけ、その菓子を口に放り込んだ。

仕方ねえよな。
おまえの言う”でりかし”とやらに欠ける物言いで、おまえを怒らせたのは確かに俺だ。
問題は、それが一つ、二つじゃねえってことだ。
おまえ、今までそんなにたくさん一度にそいつを食ったことなんか、なかっただろ?
かごめ、それにその菓子、いつもと少し匂いが違ってなかったか?

「い・ぬ・や・しゃ♥ 
と、機嫌良く振り向いたおまえに、最初、俺はほっと胸を撫で下ろした。
その時、今のこの状況は考えてはいなかった。

おまえの瞳が、あんな妖しい光を放つなんて。
おまえのくちびるが、あんな艶やかな響きを紡ぐなんて。

俺の身体は後ずさりした。
かごめ! 俺の理性は危ないと警告を発したんだ。

けれど、
どこかで、俺は望んでいたのかもしれねえ。

けれど、
今のおまえは、いつものおまえじゃねえだろ?

俺の身体は後ずさりする。
かごめ! 俺の理性は、今もさらに強く警告を発している。

けれど、
どこかで、俺は望んでいるのかもしれねえ。

おまえの瞳が、こんな妖しい光を放つのを。
おまえのくちびるが、こんな艶やかな響きを紡ぐことを。

けれど、けれど・・・、

「かごめ!」
俺は、次に続くべき言葉を見つけられねえ。

「かごめ! それ以上は、もう・・・」
今のおまえは、いつものおまえじゃねえんだ。

その先は――。

その先は――もう止まれねえ!

正気に戻ったおまえに、その時、俺はなんて言えばいい?
俺にできることは、おまえを泣かせることだけなのか?

どうせ泣かせちまうんなら、

他に道はないのなら、

おまえの涙を、俺のせいにしてやるべきなのか?

「かごめ・・・」


そして、俺は――。

ー FIN ー

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(初書き2006.05.09/改訂2006.05.24)
犬君、押し倒す理由を、色々とこじつけてますけど・・・。^m^
男の力ならば、ましてや犬君ならば、か弱い女の子を振り払うこともねじ伏せることも、本当は軽いものですよね。

犬君、やっぱり、その気があるんだよ。
きっかけが欲しいだけじゃないかな?って。(≧∇≦)/バンバン

ここから先は、かごちゃんが『獲物』に替わるんですか?
そこのところ、どうなんですか? 犬君!
くすっ。^m^
犬君は、かごめちゃんの視線と匂いで落ちるみたいですけど、私はかごめちゃんの太腿に!(爆)

minさん、美味しい美味しい「朔犬かご」いや、「かご朔犬」を心ゆくまで楽しませて頂きました。
ご馳走様でした〜。(^^)/

イラスト「若様始め」より





【Iku-Text】

* Thanks dog friends ! *

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