〜〜イラスト『求愛』 〜イメージSS『忠誠を誓うかのように』〜
『 忠誠を誓うかのように 』 「おまえは生きている。 生きて行く者は、幸せにならねばいけない」 本当に、望んでいいのだろうか。 本当に、未来を夢見ることが許されるのだろうか。 俺なんかが、幸せを望んでいいのだろうか。 犬夜叉は背にかごめの気配を感じた。 遠くを見つめたまま動かない犬夜叉に、かごめはかける言葉などなかった。 ただ、いつだって犬夜叉の傍らに居たい。 かごめの思いは、ただ、それだけだった。 犬夜叉はすっと息を吸い込むと、そのまま振り返りもせずにぽつりと、それでもはっきりとこう言った。 「かごめ。俺はおまえの笑顔が好きだ」 「犬夜叉・・・」 突然の犬夜叉の告白に、かごめは背を向けたその彼(ひと)の名を口にして、立ち止まることしか出来なかった。 「かごめ。俺は・・・、俺はおまえが好きだ。誰よりも」 犬夜叉はゆっくりと振り返ると、かごめの瞳を真っ直ぐに見詰めて想いを告げる。 それは、ずっと犬夜叉がかごめに告げたかった想い。 きっと、口に出せないと心の奥底に封印してきた言葉。 「ほんと? 誰よりも好きって、・・・ほんと?」 こう言葉を返したものの、かごめが欲しかったのは、決して『一番』だとか『誰よりも』というものではなかった。 何よりも欲しかったのは、『おまえが好きだ』と告げる、愛しい人の想い。 ―――おまえが好きだ。 それは、かごめがずっと欲しかった言葉。 きっと、犬夜叉からは望めないと思っていた言葉。 何より欲しかったのは、まっすぐに自分を見つめる愛しい人の想い。 「ああっ、嘘は言わねえ。 だけど、絶対口に出しちゃいけねえって、ずっと、ずっと心にしまいこんでた」 犬夜叉の瞳がまっすぐにかごめを捉える。 けれども、かごめには犬夜叉の顔はよく見えてはいなかった。 かごめの両の目に涙が溢れる。 潤んで歪んだ視界の向こう側で自分を見つめているだろう大好きな彼(ひと)に、かすかに、とてもかすかな声でこうつぶやく。 「・・・・・・犬夜叉」 かごめに向って一歩踏み込んだ犬夜叉はかごめの手を己のが手に取り、 もう一度、迷いなく想いを告げる。 「かごめ。俺はおまえが好きだ」 そう言うと、犬夜叉は腰を落とし、恭(うやうや)しく愛しい少女の手に口付けを落とす。 それは、騎士がただひとりの姫君に忠誠を誓うかのように。 永遠の告白を貰った少女は頬を朱に染め、誰より愛しい少年にまっすぐ想いを返す。 「犬夜叉、私もあなたが好き。この世の誰よりも」 二人のかたわらを、さわりと風が吹き抜けていく。 花が舞う。 薄紅色の花が舞う。 ー 了 ー ************************************************************* (初書き2006.01.30/改訂2006.02.03) 犬君には、いつか真っ直ぐかごめちゃんを見つめて、告白して欲しいです。 イラスト「求愛」より |
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* Thanks dog friends ! *
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