『Dance』 〜イメージSS『Shall we dance , lady ? 』〜  






  『Shall we dance , lady ? 』





「なあ、
俺たち、あれからどれくらい経つんだろうな ・・・」



ぱちん ・・・・・・。
火にくべられた薪より、小さな枝垂れ花火のように火の粉がちらちらと降り注ぐ。
ふわり ―― 柔らかに空気が揺らぐ。








ゆったりと、
・・・・・・ ゆったりと、時が流れていく。



















火に掛けられたポットから緩やかに湯気が立ち上る。
かちゃり。
トポトポと、手にしたポットから芳しく香り立つお茶を茶器に注ぎ移し、
柔らかな微笑みとともに質問を投げかけた相手に、器を手渡しながら聞き返す。

「どれくらいって・・・ 」






「あんたと、・・・ 出逢ってから?
それとも、今みたいに過すようになってからってこと?」

柔らかな笑みが浮かぶその顔は、問い掛けた相手に真直ぐに向けられている。
初めから、問いかけの答えなど気にする様子もなく。







「どっちだと思う?」

手渡された茶器を眼前にかざし、かすかに悪戯な光を宿した眼差しで、
たゆたう湯気を見つめながら、また問いを投げ返す。

彼は、答えが欲しいのだろうか。
ただ、傍らの彼女と過す、何でもないひとときを楽しんでいるだけのようだった。




「分かんない ・・・」

答えを返す彼女にとっても、それは同じかもしれない。







「でも、どっちでも、ずっとあんただけを見つめているよ、私。
今もあの頃も ・・・ あんただけを」



「俺もおまえだけさ。ずっと ・・・。今はおまえだけを見つめている」


二人にとって、それが真実。
それだけが欲しい答え。












くすりと、笑い声がする。
そして揶揄の言葉が紡がれる。


「ほんとかなぁ。あんた(の心)には桔梗も いるじゃない」

少し眉間に皺を寄せ、わずかに頬を膨らませて、かごめが言う。


「・・・・・・」














かごめの腕が、ふわりと彼の首に巻きつく。
ぴくりとした反応に、彼の体が緊張していたことが手に取るように伝わってくる。

「くすっ。犬夜叉が私を心から想っていてくれるって、分かってるよ。
あのね、今のあんたにしてくれた桔梗も忘れちゃ駄目!
私は、全部ひっくるめて、そんな犬夜叉が好きなんだからね。分かった?」

ふわりと微笑むかごめの顔に、陰は見当たりはしない。



かつて、揺れる想いに泣いたこともあった。
今では、その全てが愛しい想い出だと呼べる。









柔らかで暖かな温もりが、犬夜叉の体からこわばりを解いていく。
その背に両の腕を回し、己の腕の中にすっぽりと収まったかごめに囁きかける。

「おまえには敵わねえよな」
「だって、今の犬夜叉が好きなんだもん」
「俺もそんなかごめが大好きだ」
「よく、言うようになったわね。面と向かって ・・・・・・・」
「そりゃあな」


ふたりは、互いの瞳に愛しい光を見い出す。
そして、くすりと笑い合う。












「おいっ、踊らねえか?」

「その言い方。あんたって、ほんとにム-ドないわね」





「まあ、あんたがそう言うなんて、もの凄い進歩だけどね」

くすくすくす ――― 笑みが止まらない。






「どう言ったら、いいんだよ!教えろ」

不器用で照れ屋な犬夜叉が、顔を赤らめ精一杯の勇気で言葉を返す。



「えっとね ・・・、 ” Shall we dance ,lady ?  ” って、言える?」

「さ、さぅ、さぅるい ・・・ だんす ・・・、
 しゃうる ・・・ 、Shall うぃー ・・・ 、
 Shall we dance、れでぃー? ・・・・・・ どういう意味だ?」

「『 さあ、踊りましょう。お嬢さん 』って言う意味」




「・・・・・・」










「お嬢さんだと? おめえがか?」

にわかに、怪訝そうな目つきでそう切り返す。













「いけない?」

かごめも、精一杯睨み返す。














「おめえ、ガキいるじゃん」

「いけない?あんたの子よ」

「そうだけどさ ・・・・・・」










「あんたの前では、何時だって恋する乙女よ。私」

それが、女の子の永遠の想い。





「分かったよ!
Shall we dance、かごめ ? 」

へへんと、自慢げに言って、手を伸ばす。
思いも寄らぬ綺麗な発音。
さすがに、耳はいい。




「あくまで、お嬢さんって言わない気?」

ふくれっつらのレディーが、溜息混じりに切り返す。


















帰ってきた言葉は、――――――

「俺が誘うのは、おまえだけだかんな」




「・・・・・・ 犬夜叉、あんた口が上手くなったわね」




















「なあ、かごめ、朝まで二人で踊ろうぜ」

「朝まで?」

「そっ♪」











舞い落ちて来たのは、降りしきる紅い花。
視界を覆い尽くしたのは、白銀の滝。
艶(つや)やかに花開いたのは、漆黒の扇。









「朝まで、・・・・・・ずっと、踊ろうぜ」








ー Fin −


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 (初書き2005.05.27/改訂2005.10.23)
うあ〜〜〜っ、甘いはずのに、何気にお笑いです。
最初、SSにもなってない台詞だけが浮かんだ(オエビ参照)、じゃれ合い犬かごです。( ̄ー ̄;A
そのままでは、あまりにSSとして恥ずかしいので行間を書いてるうちに、
・・・・・・微妙にエロチックになった模様。_| ̄|〇
ロマンチックな ”Shall we dance ,lady?”を書くはずが、
ハナコさんがお描きになられた かごめちゃんのやけに立派な腰つきを見ていたら、
子持ちの二人になってしまいました。(←それも私のせいですが・・・)笑って許してやって下さい。
軽〜〜い気持ちで書いてしまいましたわ。(なはははは〜〜)
本当は5月の作品なのに、秋の夜長に見えるのはな〜ぜ〜?
犬君、何気に発音がいい。(≧∇≦)
「Dance」 イメージSS





【Iku-Text】

* Thanks dog friends ! *

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