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『 君に幸あれ 』 優しい夜風が吹き抜けていく。 春も盛りとはいえ、さわりと髪を躍らせる風は夜の冷気を含んでいる。 肩から淡い若草色の衣を羽織り、小さな灯りひとつを手に朧（おぼろ）な空を仰ぎ見る。 花冷えに微かに身体を震わせたのを、当然のように気付く貴方の優しさに 私は幸せでいっぱいになる。 私は貴方を想って心をいっぱいにしていた。 あの貴女（ひと）を想い、瞳を揺らす貴方を見つめるのは辛くも甘かった。 私は貴方を想って心をいっぱいにしていた。 貴方を想う私を想い、瞳を揺らす貴方を見つめるのは辛くも甘かった。 私は貴方を想って心をいっぱいにしていた。 私を想い、瞳を揺らす貴方を見つめるのは辛くも甘かった。 そんな優しい貴方だからこそ、私は貴方に惹かれたの。 心通じたあの貴女（ひと）を想って、放っておけない貴方の優しさに惹かれたの。 たとえ、私の想いを断ち切ろうと、 あの貴女（ひと）を放っておけない貴方の優しさに惹かれたの。 たとえ、私への想いを断ち切ってでも、 あの貴女（ひと）を放っておけない貴方の優しさに惹かれたの。 そんな優しい貴方だからこそ惹かれたの。 それでも、私にくれる貴方の優しさに惹かれたの。 報われなくてもいい。 ただ貴方の傍に居たい。 その想いは、 半分 ･･･ 『本当』で ･･･、 半分 ･･････ 『嘘』 ･･････ だった。 優しい夜風が吹き抜けていく。 春も盛りとはいえ、さわりと髪を躍らせる風は夜の冷気を含んでいる。 「おい、夜風は身体に毒だぞ。 もうじき花の季節が終わるといっても夜は冷える。 程ほどにしておかないと、風邪引くぞ」 「うん。ありがと、大丈夫よ。無理なんかしないから」 「そうか？」 「うん」 私は柔らかい微笑で貴方に応える。 今、私の傍らで私をまっすぐに見つめる貴方の眼差しがとても愛しい。 私たちは長い旅をしてきた。 私と貴方とあの貴女は、互いに互いの瞳を見つめ合った。 私は貴方を誰より深く愛してきた。 あの貴女は貴方を誰より強く愛していた。 貴方はあの貴女と私に誰よりも誠実に愛をくれた。 誰の想いが一番深かったのだろう。 誰の想いが一番強かったのだろう。 誰の想いが一番誠実だったのだろう。 愛する人の幸せを願って、ただひたすらに変わらぬ愛を育んだ。 誰の想いが一番深かったのだろう。 誰の想いが一番強かったのだろう。 誰の想いが一番誠実だったのだろう。 愛する人の幸せを願って、ただひたすらに変わらぬ愛に生きた。 誰の想いが一番深かったのだろう。 誰の想いが一番強かったのだろう。 誰の想いが一番誠実だったのだろう。 今、私の傍らには、私をまっすぐに見つめる貴方がいる。 朧（おぼろ）に霞（かす）む春の夜の帳（とばり）の下で、 冷えた髪を、少し震える肩を、緋色の衣ですっぽりと覆い、 優しく壊れぬように私を抱きしめる。 「かごめ ･･････ こんなに冷てえじゃねえか ･･････」 優しい光を瞳に湛え、まっすぐ私を見つめる貴方に、私もまっすぐに微笑を返す。 「犬夜叉。 好きよ。大好きよ」 「ああ、俺もかごめが大好きだ」 そして貴方は優しい口付けを落としてくれる。 私たちはとても長い旅をしてきた。 私と貴方とあの貴女は、互いに互いの瞳を見つめ合った。 今、私は貴方と優しい口付けを交わす。 誰の想いが一番深かったのだろう。 誰の想いが一番強かったのだろう。 誰の想いが一番誠実だったのだろう。 私と貴方とあの貴女は、 愛する人の幸せを願って、ただひたすらに変わらぬ愛を貫き通した。 誰の想いが一番深かったのだろう。 誰の想いが一番強かったのだろう。 誰の想いが一番誠実だったのだろう。 私と貴方とあの貴女の、 愛する人の幸せを何より願うその想いが、『今』へと続く。 想いはただ一つ。 ――― 君に幸あれ、 君に幸多かれ。  − 了 −************************************************************************* （初書き2005.04.14）甘いですか？ くどいですか? しつこいですか？（笑） さて、問題です。 １）「今」は一体「いつ」でしょう? ２）「誰」の想いが一番だったのでしょうか? ３）ところでこれは、おポエムでしょうか? ＳＳでしょうか？（笑） イラスト「幸せの瞬間（とき）」より
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