星の契り〜星の花〜
愛しいひとに、俺の想いを捧げよう。
星を象ったこの花に、託した俺の心からのこの想いを―――。
『 星の花 』
見上げる昊(そら)は、あの日と同じ。
深淵の闇を思わす天幕に、金銀砂子を撒き散らかしたかの如きあまたの星々が煌く。
草むらには、あの日と同じ光が乱舞する。
涼やかな風が俺の髪をふわりと舞い上げる。
こんな夜は、幸せな微笑(えみ)だけを残して逝ってしまったおまえを想い出す。
おまえの心に触れようと、俺は何度おまえを追いかけたことだろう。
おまえは本当に幸せだったのだろうか、と。
「おまえは…来てくれた…。それでいい…」
ただ、それだけを口にしたおまえ。
この季節になるとおまえのあの顔を思い出す。
この花を目にすると、俺はあの日から何一つ変わっていないのだと自覚する。
今も変わらず、おまえが愛しい。
俺のすべてを、おまえにならくれてやってもいいと思った気持ちに変わりはない。
見上げる空は、あの日と同じ満天の綺羅の星。
ひときわ強く煌く星は、桔梗――おまえのようだ。
俺はおまえを求め、空(くう)を抱きしめる。
おまえに出会って、俺は愛しいという想いがこの世にあると知った。
この季節になるとあの日を思い出す。
この花を手にすると、あれからずいぶん変わった自分に苦笑する。
見上げる昊(そら)は、あの夜と同じ。
俺は今、この腕に幸せを抱きしめている。
俺の傍らには友がいる。
俺の腕の中にはあいつがいる。
今も変わらず、おまえが愛しい。
俺のすべてを、おまえにならくれてやってもいいと思った気持ちに変わりはない。
それでも俺は、明日が欲しいと願ってしまった。
あいつの傍らで、生きていたいと願ってしまった。
見上げる空は、あの日と同じ満天の綺羅の星。
温かな光を湛える星は、かごめ――あいつのようだ。
ただただあいつが愛しくて、
俺はあいつをこの胸に抱きしめる。
かごめ―――、
あいつに出会って、俺は幸せという想いがこの世にあると知った。
今は、あいつがひたすらに愛しい。
俺のすべてをあいつにならくれてやる。
命であっても、今すぐにでも、かごめにならば、俺のすべてをくれてやる。
けれど、あいつは俺の命など要らぬと言う。
代わりに、あいつは俺と一緒に幸せを見つけていきたいと微笑む。
おまえが愛しい。
あいつが愛しい。
愛しさに限りはない。
愛しさに終わりなどない。
愛しさに理由(わけ)などない。
だから、俺はおまえに詫(わ)びはしない。
だから、俺はあいつにも謝りはしない。
俺は今、愛しさを抱き締めて生きているのだから。
俺はこうして生きてきたのだから。
おまえの名を冠した青い星の花。
俺の想いをこの花に託す。
おまえに出会って、あいつに出会って、俺は、今この時を生きている。
おまえが愛しい。
あいつが愛しい。
愛しさに限りはない。
愛しさに終わりなどない。
愛しさに理由(わけ)などない。
とこしえに変わらぬこの想いを抱いて、俺は、今この時を生きている。
涼やかな風が俺の髪をしなやかに舞い上げる。
おまえに出逢えてよかった。
あいつに出逢えてよかった。
愛しいひとにこの想いを捧げる。
巡り逢えてよかった、と。
- 了 -
Iku「星の契り」より
初出 2007.07.08 / 改訂 2007.07.17
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