わがままな俺
おまえがどれほどあの世界を愛していたか、
俺は知っていたはずだった。
おまえがどれほどあの世界に愛されていたかも、
俺は知っていたはずだった。
すまない。
俺は謝罪してもしきれないことをしてしまった。
おまえの匂いを捉えた俺は、こうせずにはいられなかった。
それはただ一つ、おまえをこの腕に抱き締めたかった。
なぜ、俺はこの手でおまえを引き入れてしまったのだろう。
なぜ、俺がおまえの元に飛び込んで行かなかったのだろう。
俺はおまえのものだと思っていたのに。
おまえは俺だけのものでは決してないのに。
すまない。
俺は謝罪してもしきれないことをしてしまった。
おまえの匂いを捉えた俺は、他には何も考えなかった。
それはただ一つ、おまえが欲しかった。
かごめ、
わがままな俺を責めてくれ。
「犬夜叉、ごめんね。
待っていてくれた…?」
「かごめ…」
「バカ野郎…、
今ままでなにしてたんだ」
「赦してくれ」とは決して言わない。
おまえが欲しい。
それが、俺が願ったただ一つの望みだから。
かごめ、
わがままな俺を笑ってくれ。
それから、
もうどこにも行かないでくれ。
- Fin -
* 原作最終話「明日」より台詞引用があります。
初出 2009.03.01/ 改訂 2009.05.08
Iku 開設五周年記念作品「もう離さない」
あとがき (click開閉)
かごめを自分の世界に引き込んだ。
それこそが、犬夜叉のかごめへの想いそのものかと思いました。
再び井戸が繋がった時、犬夜叉が井戸に飛び込むという選択肢もあったと思うのです。
それをせずに、犬夜叉は井戸に手を伸ばしかごめを自分の世界に引き入れました。
それって、ある意味、犬夜叉のエゴではないかと思うのです。
「かごめを大切に思っているのはおれだけじゃない」
かごめの匂いを捉えたとたん、三年かけて自分に言い聞かせてきたことが一瞬で吹き飛んだわけですな。
欲しいものはそんな理屈抜きで欲しいのだと!
宝物は穴掘って自分のテリトリーに隠す犬のようです。
私の目には、井戸からかごめを引き揚げる犬夜叉は、かごめの家族から「かごめを略奪」することであり、かごめに向かっては「おまえが欲しい」という「愛の告白」なのかなとも思うのです。
「バカ野郎…、今ままでなにしてたんだ」
↑
実はこの台詞、最終話を初めて読んだ時に一番違和感を覚えた台詞でした。
「バカ野郎」はまあいいとして、素直に「逢いたかった」とか「おまえ以外の誰を待つって言うんだ?」とか、もっと短く「ああ」とか肯定的な台詞が言えんのか、犬夜叉! と。
時が流れ、これが犬夜叉のかごめへの“わがまま”なのかもと思ったのでした。
どこからどう見ても身勝手極まりない俺様な台詞に、犬夜叉の「欲」というか、かごめへの「想い」が透けて見える。それは、かごめが欲しくてたまらない犬夜叉の執念とも言うべきかごめへの想いが滲み出す本音ではないかと。
そう思ったら、もの凄い「萌え」な台詞に聞こえるではありませんか!
私の高校は3月1日が卒業式でした。
ということで、サイト開設記念日でもあるこの日に加え、犬夜叉の元に羽ばたいたかごめの決意に寄せて、今日という日にこちらの作品をUPさせていただきました。
と言いつつ、2009年3月1日は日曜日だったんですけどね。(苦笑)
2009年03月01日
※イラスト「もう離さない」の初出は2008年11月23日(日)に開催されました犬夜叉オンリー同人誌即売会「これで終わりじゃなかったろ!?」様の当日企画「かるた絵」の一枚「も」に参加させていただいたものの加筆版です。
ちなみに、かるた絵版は
かるた絵版はこちら より
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