〜『限りない想い』初版〜  



※注意※ こちらは、管理人による465話「光」未読時点での犬桔妄想です。

       その旨ご了解の上で、お進み下さい。(スクロール願います↓)


『 限りない想い 』 初版



「桔梗なしできさまがどう戦うか…」
奈落の酷薄な笑みとともに投げつけられたこの捨て台詞に、振り返った俺の目に映ったものは既にうつろな瞳(め)をして、まるで血を流しているかのように真っ赤な夕日に染められてたおまえだった。

この時、おまえの命が終わるのではなく、もうずっと前に終っていたのだと突きつけられた。そして、仮初(かりそめ)の命も、今終焉の時をを迎えたのだという認めるしかない現実が目の前に横たわっていた。

それは俺にも分かっていたこと。
ずっと長い間、心の奥底に封印してきた哀しい真実。

「桔梗……」

俺は、守りたいと願った彼の女(かのひと)の名を、ただ呼ぶことしかできなかった。
俺は、突きつけられた現実に、涙一つ零すことさえできなかった。













俺は、桔梗を腕に抱き、二人きりの最期の時を過ごす。
桔梗からは、哀しいほどにかごめとよく似た匂いがした。
そして、それを覆い隠すほどに墓土の匂いがした。

一体いつの頃からだろう。
知らぬ間に、かつての桔梗の匂いが、かごめの匂いとなっていた。

一体いつの頃からだろう。
かつての桔梗の匂いが、墓土の匂いとともにあっても不思議を覚えなくなったのは。

一体、いつの頃からそうなったのだろう。
俺の中で、桔梗は桔梗で、かごめはかごめになったのは。

俺は、久しぶりに桔梗、おまえの優しい匂いを抱きしめられている。

自分でも分からない。
君に遭うたびに心落ち着かなくなっていった。

君を現世に縛っていたのは、俺だったのだと思う。
君と一緒にどこにだって行けるほど愛していた。

それがたとえ、冥府の扉の向こうであっても。
君と一緒なら、この命をいつだって差し出せると。

けれど、いざとなるとその手を払いのけてしまった俺。
死人のおまえの哀しさに、俺は目をつぶってしまったんだ。

赤い血のような太陽が沈んでいく。
俺は君を胸に抱いて君だけを想っていた。

俺は君の優しい匂いに包まれていた。
胸が張り裂けるほどに悲しいのに、心のどこかでほっとしていた。

君にとっての幸せは、あのまま現世を彷徨うことではないと、分かっていたから。
たとえ、仮初(かりそめ)の命だとはいえ、いつまでも君を感じていたかった。
君をこの世に縛っていたのは、まぎれもなく俺だった。

俺は、君にきちんと告げたことがあっただろうか?
「愛していたよ」と。
生まれたままの永遠(とわ)の命を捨てて、君と一緒に泡沫(うたかた)の命を生きていきたいと願った想いに、偽りは何ひとつなかったのだと。

何度でも君に伝えたい。
「誰よりも愛していた。君と一緒の時を生きて、君と一緒に逝きたかった」と。

西の空に陽が沈む。

(桔梗、見えるか? 俺とおまえは同じものを見ているんだ。)

俺は言葉なんて口に乗せられはしない。
ただ、おまえを抱いたまま、最期の時を、最期の太陽が沈んでいくのをじっと見つめていた。

「犬夜叉…」
小さく呟くおまえの優しい声。
「桔梗…」
ただ、名だけしか返せない口下手な俺。


「おまえに出会えて良かった」
嬉しそうに呟くおまえ。

「俺もだ」




「おまえを好きになって…幸せだった」
痛々しいほどに傷つきながら呟くおまえがとても綺麗で、俺はこれだけしか伝えられない。
「俺もだ」

おまえは、他には何も要らないのだろう。

だけど、まだ、俺はおまえに伝えていない。
俺の心をおまえに伝えていない。




「桔梗、俺もおまえに出会えてよかった。俺もおまえを愛していた」
と、ただそれだけを口にして、俺は、桔梗の唇に俺の唇を重ねる。

ひんやりとしたおまえの唇。
命の炎の感じられるぬおまえの頬。
おまえの唇は、何故か涙の味がした。

「嬉しい」
そう言って、微笑んだおまえの安らかな顔がとても綺麗で、幼く見えた。

愛しくてたまらない俺の桔梗。

いつの間にか、空は闇に沈み、星が煌めいていた。



頭上には、ひときわ強く煌めく白銀の星。
少し離れて赤身を帯びた金の星。

東の空より西の空へと、二つの星を分かつように白く輝く天の河が流れていた。

懐かしい記憶が思い起される。

「一年に一度、誰よりも大切な人とこの夜ばかりは巡り逢えるの」
「母上はどなたに逢いたいの?」
「そうね、母ならば犬夜叉、あなたです」
「えーっ、それって嬉しいけど、嫌だ」
「どうして?」
「いつも母上と一緒の方が嬉しいもの。一晩だけなんて嫌です」
「あら、それなら母の一番はおまえの父上にしてしまいましょうか」
「うーん。それもちょっと…」

桔梗、桔梗、俺の桔梗。

俺は君が好きだった。俺は君が大好きだった。
君が何者であろうと、仮初の命であろうと、再び君に出会えてとても嬉しかったんだ。



桔梗、桔梗、…俺の桔梗。

俺は君を愛していた。
この世に在ることが君にとって哀しみ以外のなのものではなくても、君に再び出会えてとても嬉しかった。



桔梗、桔梗、……俺の桔梗。

俺は君を愛していた。
今やっと、君に俺の心を伝えられた。
贖罪ではなく、罪悪感ではなく、ただ一日でも長く君を見ていかった。



自分のために生きてみたいと思わせてくれたのは桔梗、それは君。
幼過ぎた俺たちは、幼いままに互いの魂が惹かれ合った。

夢だけを追って、願いだけを語って、ふたりで見果てぬ夢の世界に生きていた。
だけど、幸せだったよ。

時が過ぎる。

星が巡る。

俺は、冷たい君の骸を抱いて、頭上の星が巡るのをじっといつまでも眺めていた。

乾いた口の中にしょっぱさが広がる。


見上げる宙にあるはずの星は、どこかに消えてしまって、今は見えない。






君に出会えて、幸せだった。
今はもう、取り戻すことができない君との夢の未来。

再び蘇った君を、仮初の命と知っていても、俺は君を追わずにはいられなかった。

桔梗、桔梗、……俺の桔梗。

俺は君を愛していたんだ。
今やっと、君に俺の心を伝えられた。
贖罪ではなく、罪悪感ではなく、ただ一日でも長く君を見ていかった。

愛しくてたまらない――俺の桔梗。

空が白んでくる。

一つ、また一つと、星が消えていく。

新しい太陽が東の地平線から昇ってくる。



「桔梗、俺もおまえに出会えてよかった。俺もおまえを愛していた」
と、ただそれだけを口にして、俺は、もう一度桔梗の唇に唇を重ねる。

ひんやりとしたおまえの唇。
命の炎の感じられるぬおまえの頬。
おまえの唇は、何故か涙の味がした。

二度と見開くことのないおまえの黒真珠を思う。




桔梗、俺の桔梗。
君への愛しさと、君との過ぎた日々を胸に抱き、俺はまた生きていく。

君へのこの想いは決して消え失せたりはしない。

君を心から愛していたと。




ー 了 −



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(初書き2006.07.11)
うちの犬夜叉、心から桔梗に(も)惚れています。
こちら、桔梗が好きだとひたすら吼えているだけです。
そのうちきちんと書き直せたらいいなあ・・・。_| ̄|〇
一応、サンデー465話を目にする前に書き落としましたです。
そして、『星合〜遥かなる想い〜』(犬かご編)に続くのです。





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* Thanks dog friends ! *


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