〜 イラスト『おいっ!v』(改:遊びに来たぜ♪)』〜   
〜イメージSS『”独り”の秘密』〜   





  『 ”独り” の秘密 』






「よいしょっと♪」


かごめが井戸をくぐリ抜けると、頭上には太陽が煌いていた。
空は高く、吹き抜けていく風はかなり冷たくなっていた。
それでも、寒空の下、ぬくもりを与えてくれる太陽の恵みに ”ほっ” とする。
朝はずいぶんと寒くなってきたけれど、まだまだ日中(ひなか)は暖かい。



昨夜は、新月。
そう、それは月に一度の 『朔』 の夜。



二日前、あちらへ戻ると決めた際、
かごめは、犬夜叉に 「一緒に来ない?」 とは、聞いてはみた。

返事はすげなく、 「逃げるのは嫌でぃ!」


  まあね、 ”独り(ひとり)” で居るわけではないし、
  たとえ ”独り” でも、ヒトの姿であっても犬夜叉は強い。
  そんなところは信頼している。

  でもね、でもね、怪我なんてしてないでよね。
  お願いだから。

  いつも、いつも、先頭切って走ってく あなたが目に浮かぶ。
  お願いよ。
  怪我なんてしてないでよね。


かごめの心は、少年の無事を確認するまで、ざわめきを隠せない。













かさり ―――。



「おいっ、遅えぞ!」

犬夜叉は両手を袖に入れたまま腕を組み、かごめの背後から声をかける。
口はへの字で、眉間に皺を寄せたいつもの仏頂面で。


    つい、憎まれ口を叩いてしまう。
    おまえの顔を見ると、ほっとする。
    おまえの笑顔は、俺には陽だまり。
    おまえを見つけて、世界は色づく。








「あっ、犬夜叉!」

かごめの瞳は待ち人を捉え、心のざわめきは心浮き立つさわめきとなる。
犬夜叉のいつもの仏頂面が、微笑みに見える。


    つい、微笑が浮かぶ。
    あなたの顔を見ると、ほっとする。
    あなたの金の瞳は、私には夏の太陽。
    あなたの無事が分かると、世界は輝く。








「犬夜叉、ただいま!
 ねえ、昨日の夜はあんたってば何してたの?」
犬夜叉の手を借りて井戸をまたぎ越し、受け止める緋色の袖にすっぽりと包まりながら、
満面の笑顔で帰還の挨拶をする。



「別に ・・・・・・。 いつものとおりさ」
犬夜叉はかごめの背にある重いリュックをいつものように己の肩に移し、
相変わらずの仏頂面で、返事を返す。



「ふー―ん。私がいなくて寂しくなかった?」
覗き込むようにして、聞いてみる。



「ばっきゃろう! なんで俺が寂しがらならきゃなんねんだよ!」
鼻息も荒く、そのくせ頬を少し朱に染めて、切り返す。



「へーっ、ほんとかな?」
「何で俺が嘘なんかつかにゃなんねえんだ?」


「はいはい」
「嘘なんか絶対ついてねえぞ」


「いいわよ」
「ほんとにほんとだぞ」







いつもの時が回りだす。



あなたとおまえが、互いの場所に戻ってくる。








      だけど ・・・・・・、


      やっぱり昨日の夜のことは、 ――― まだ、言えねえ。









− 了 −



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(初書き2005.11.13/改訂2005.11.09)
※こちらのイラスト『おいっ!』のイメージSS『”独り”の秘密』は、
朔限定作品『あだし野』(四連作)からの続き設定となっております。
せっかく、朔の夜に自覚したことも、面と向き会ったら一言も言えないのね。
ナイーブな奴v( ̄m ̄)
ところで、その朔限定イラストは?・・・相変わらず、ローカルに放置中。
イラスト「おいっ!v(改:遊びに来たぜ♪)」より





【Iku-Text】

* Thanks dog friends ! *

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